今日は銭湯に行くつもりじゃなかった。
でも来てしまった。
というのも、「サウナ図解」というトークライブに行って、そこで出演者の清水みさとさんが駒の湯への愛を語っていた。
終演後もみさとさんと駒の湯トークをさせて頂いた。
駒の湯は僕の家から近くて、そういえばしばらく行っていない。久しぶりに駒の湯行きたいな…となったのである。
完全にみさとさんのせいだ。ありがとうみさとさん。
駒の湯に着くと、定休日の駒の湯は当然閉まっていた。
頭の中で完全に駒の湯でどういう動線で動くのかシミュレーションしてたのに。サウナ室で演歌聴きたかったのに。うかつだった。
ならばせめて別のサウナでと、周辺の銭湯を探すと千代の湯と富士見湯があった。
千代の湯は友人から「スチームサウナの中に機敏な黒虫がいらっしゃった」という愉快なエピソードを聞いていて、でも今それを楽しむ気分ではないので富士見湯にした。
富士見湯に着くと、サウナの受付時間は終わっていた。
あとタオルを持ってなかったから貸しタオルを頼もうと思ったらやってなかった。販売のタオルは210円とちょっと高かった。
タオルも高いしサウナ無いしどうしよう。ちょっと悩む。
小さいことかもしれないがそこは悩ませてくれ。僕は32歳の会社員だが、Dランク大学の新卒がもらう初任給くらいしか稼ぎがないのだ。
ならば稼げるように努力しろよという話なのだが、僕はお金を稼ぐという行為にハイパー興味がない。何だったら「お金を稼いだら面白くなくなるんじゃないか」と思っている節があって、「ちょっと稼げてないくらいがちょうど良い」と思ってしまっている。悪い癖だ。
まぁ初めて来た銭湯だったし、入浴していくことにした。
脱いで、浴室に。
ぐるりと見回すと、サウナ、ジャグジー、白湯、バイブラ、薬湯、水風呂がある。
鏡が腐食したりタイルがひび割れたりしてるけど、シャンプーとボディソープはある。ほれ、あるとこにはちゃんとあるんだよ、ねぇ、表参道のしみ…おっと愚痴はいけない。
体を洗って白湯に浸かる。ちょっと熱いなと思ったけど42℃だった。今日は割と寒かったから体が冷えていたんだろう。
ゆっくりと温まりつつ人間観察をする。
おじいちゃんが白湯に入ってきた。りっぱなキンタマだ。だが待て。このおじいちゃん、
包茎か?
包茎だ!
僕の今までの統計上、おじいちゃんは皆ズルムケだった。それが今日くつがえされた。
しかし、わかったことがある。
包茎のおじいちゃんは、かわいい。
若者の包茎はちょっと残念に映ってしまうが、おじいちゃんまでいくとかわいさになるというのは興味深い。あれならモザイクもいらない。花咲か天使テンテンくんだ。
しっかり冷たい水風呂に浸かって、浴槽の縁に腰掛けていると、今度は白人系の外人が入ってきた。
「白人系の外人だからきっとデカいんだろうな、どれくらいかな」と期待に胸を躍らせたのだが、角度的に見えない位置で体を洗い始めたので、しばらく待つことにした。
なかなか体を洗い終わらないのでバイブラ湯に入って待つことにすると、すぐのタイミングで外人が立ち上がった。
いよいよだ!と胸を躍らせたが、バイブラから立ち上る湯気のせいで僕の眼鏡がくもりかかっていることに気づく。
外人は歩いて浴槽の方に来ている。しかしくもっていて見えない。どうにかせねば。急げ。
慌てた僕はとっさに眼鏡を外した。馬鹿。
裸眼視力は0.1に満たないのに。視力の悪い人間にとってなかなかに恥ずかしいことを来てしまった。
眼鏡をお湯ですすいでかけ直した頃には、外人は湯に浸かってしまっていた。
恥ずかしさを噛み締めつつ、気を取り直して今度は湯から上がるところを待つことにした。
外人は意外と長く湯に浸かっていたので、長湯が苦手な僕はちょっとのぼせ気味になったが、足湯に切り替えて粘ったらようやく外人の息子と対面することが出来た。
デカい!
けど包茎か?
包茎だ!
白人系の外人が包茎だ!
かなりのカルチャーショックだった。白人系の外人に包茎がいるなんて思ってみたこともなかった。
人生は学びの連続だ。
湯に長く入っていたこともあって、その後の水風呂はとても気持ち良かった。
そしたらヤクザのお兄ちゃんが入ってきて、しっかりズルムケだったのでホッと胸を撫で下ろした。
ヤクザまで包茎だったら日本は終わりだったけど、土俵際で踏ん張った。日本はまだまだ終わらない。終われない。
ゆるりと4セットほどして浴室を出る。
帰り際に番台のおばあちゃんが「ありがとうございました」と言ってくれたのが嬉しかった。僕も「ありがとうございました」と返した。
挨拶は大事だ。
ついでに言えば納期を遅延するときの事前の報告も大事だ。
最近僕の周りで無言の納期遅延が立て続いている。こちらからやんわり声をかけるようにしているが、裏で結構傷ついていることをいつかわかってもらいたい。
だからこそ期待していないタイミングでの挨拶とか、そういう人情味を感じられるととても救われた気持ちになる。
銭湯は優しい空間だ。
まとめ方がわからなくなったのでここで終わる。
そんな時もある。