ユったりくつろぐ銭湯入門

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斉藤湯(東京都荒川区東日暮里)【山手線日暮里駅】~やのしん銭湯記vol.2~


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時系列はvol.1から数日さかのぼるが、先日斉藤湯を初めて訪れた。

名前は前から知っていた。歴史ある銭湯だ。2014年くらいまで最後の三助さんがいたところだ、確か。

一度行きたいと思っていたが、なかなか日暮里に行く機会に恵まれなかった。

いや、数年前に日暮里に行ったことはあったが、その時は銭湯に興味がなかったから斉藤湯の存在を知らなかった。

あれはそうだ、友達の元カノと会ったんだ。その子が僕の友達にひどい振られ方をしてしまったから、「元気でやってるかな?」というのが気になって会う約束をした。

その子は元気にやっていたけど、やっぱり心に消えない傷が出来てしまっていたようだった。

かわいそうだけど、それも人生だ。傷がない人間なんていない。傷つきながら、それでもなお、前に進まねばいけないのだ。

その子と谷中霊園に行って、色んなお墓を見た。

最近のお墓は洋風チックに横長の造りになっているものがちらりほらりとあって、そこには座右の銘的な文字が刻まれている。

「愛」とか「篤実」とか「旅立ち」とか。

どんな文字が刻まれているのかを見るのが楽しくて仕方なかった。

この後何人も入るお墓に自分のメッセージを刻んでしまうなんて自己主張が強すぎやしまいか。

後で入る人のことを考えていないだろう。やっぱり自分勝手だ。そういう人間のエゴが見られるのが楽しかった。

で、一緒に歩いてたらその子が急に涙を流しちゃって、「僕と会ったことで忘れたい過去を思い出させちゃったかな?」と不安になったのだが、花粉のせいだった。

涙を流して鼻水たらしてヘクションヘクションして笑っていた。

もう何年も会っていないが、どうか幸せであって欲しいと願う。

失敬、思い出に浸ってしまった。とにかく日暮里に来たのは久し振りなのだ。

銭湯関連のトークイベントが日暮里であって、せっかくなら斉藤湯に行こうと決めていた。

トークイベントはそれはそれですごく面白かった。

町田忍さんと、ガビンさんという面白い名前の人と、銭湯をリノベーションしたお兄さんが登壇されて、銭湯の今昔や、リノベーションのことなどめちゃめちゃ興味深いお話を聞いた。

また、参加者にインスタで繋がっていたsatoさんがいて声をかけて下さった。こういう出会いがあるのは嬉しい。

あと銭湯イラストレーターのメソポ田宮文明さんもいらっしゃったのでご挨拶させて頂いたら僕のことを知ってくれていた。非常に有難かった。

そんなで結構満足した心持ちで、斉藤湯へ向かった。

古い建物かと思っていたけど、普通に改装されていた。

中に入ると、ベンチに腰掛けてビールジョッキを手に持っている人が目に飛び込んできた。どうやら斉藤湯は生ビールを提供しているらしい。

湯上がり直後の生ビールなんて最高じゃないか。

サウナは無かったから、入浴のみの券を受付の人に渡して脱衣場に入る。

ちなみに、銭湯が好きになってからサウナ無しの銭湯に来るのは初めてだ。今回は交互浴を楽しもう。

休日の夕方だからか、結構混んでいる。

脱いで、浴室に。

ぐるりと見回すと、露天風呂(シルキーバス)、水風呂(バイブラ)、ジェットバス、あつ湯、白湯、炭酸泉がある。

炭酸泉が一番人気でぎゅうぎゅうに人が詰め込まれている。他は割と余裕があるのに。そのギャップがなんか面白かった。

混んでるところに入るのは好きじゃないので、白湯に浸かって体を軽く温めて、あつ湯と水風呂と休憩を繰り返した。

やってみてわかったが、サウナから水風呂に入るより、あつ湯から水風呂に入った方が水風呂への抵抗感が少ない。噂は聞いていたが本当だった。

でもサウナの時のような「はうぁ~気持ちええ~」という快感は弱い。「あー火照った体を冷やせてちょうどいいな」という感じ。サウナほど非日常感はない分、穏やかな気持ちになる。

お風呂に入っている間は暇なので人間観察をする。

子連れが多い。尻にだけ鯉の刺青が入った人が子供を連れていた。

あと三姉妹を連れているお父さんもいた。

小さい女の子がいると目のやり場に困る。僕は誰彼構わず股間を見てしまう習性があるからなおさら困る。僕と同じ浴槽に入って、向かい合って無邪気にお股をおっぴろげているから更に困る。

めちゃくちゃ意識して目線を反らす。

反らした目線の先には大学生の男の子がいた。乳首に絆創膏を貼っている。全く意味がわからなかった。

後でツイッターのフォロワーさんが「それはマラソンランナーが乳首の擦れを防止するためだよ」と教えてくれた。なるほどそういうことか、ランナーズステーション的なアレか。

でも銭湯に来てるんだから走り終わった後だよな?終わった後も絆創膏を貼ったままなのはやっぱりおかしいだろう。変態だ。ちなみに僕は変態が嫌いじゃない。

他に気づいたことは、やたら毛深い人が多いこと。

僕自身もかなり毛深くて、陰毛が腹毛と繋がっていて、腹毛は胸毛と繋がっている。言ってしまえば首元まで陰毛なのだ。

これが原因で僕は思春期に心を閉ざした。ずっとコンプレックスで、剃って誤魔化したし、裸を見せたくないから運動部に入らず文化部に入った。

あの時体毛を素直にさらけだせていたら人生ガラリと別物になっていただろうが、今の人生は充分楽しくて最高の自分だから後悔はない。どんなだったかなというのは興味がある。

でだ、僕くらい毛深い人が1人や2人じゃないのだ。数えたら6人もいる。

どういう偶然だ。あと1人現れたら僕たちは光だして空が暗くなって龍が出てくるのか。

「どうせならあと1人来い!」と強く願ったが、意識すると来ないもの。結局6人だけだった。いや、だけって、充分めちゃめちゃ多いんだけど。

斉藤湯には仲間がいっぱいいると知れたのは良いことだ。第何個めかの僕のホームだ。

さて、そんなことを考えているうちに4セットが終わった。

水風呂がバイブラだったものの温度がマイルドだったから、ずっと入っていられたのが良かった。あと絶妙な隙間があって、そこに体をはめこんで過ごせたのも楽しかった。

あつ湯の方もちょうど良い感じで、初めて交互浴にチャレンジするには斉藤湯はぴったりだと思った。

そして浴槽を後に。

着替えて、脱衣場を出て、生ビールを飲んでいる人を見て、かといって自分は頼まずに施設を後にした。

湯上がりのビールの美味しさは知っているが、僕はそれで飲んでしまうと高い確率で翌日残ってしまうのだ。しかもあんまり酔わないタイプだから、足し引きするとマイナスになる。だから僕は湯上がりはお酒をあまり飲まない。

「ああ、人並みの肝機能と酔い心地があればなぁ」などとよぎったが、とあることを思い出してやっぱりいいやと思い直した。

僕は昔、お酒で大失敗したことがある。

大学のサークルの打ち上げで、その時とあるプロジェクトのリーダーをやっていた僕は必然的に飲まされまくった。色んな人と乾杯してビールを飲まされるし、差し入れの日本酒イッキのコールが掛かるし。

めちゃめちゃ奥歯を噛み締めて何とか平静を保とうとしたら意外と大丈夫だった。

「あ、意外といけるじゃん」と思って奥歯を噛む力を少し弱めたところでスパンと意識が飛んだ。

目が覚めたら家にいた。メールが1件届いていて、見ると飲み会で同席していた女友達から絶交メールが届いていた。

全く訳がわからず他の友達に事情を聞いたら、どうやらこういうことらしい。

あるシラフの男が飲み会の場で全裸になって陰毛を燃やし始めた。女の子たちはキャーキャー騒いで嫌がったけど、そんな彼女らを見て僕はニコニコしていた。

そして一言「良い匂いだから嗅いでみろよ」と言って件の女の子の頭を鷲掴みにして男の陰毛のところにグイッと押し付けた。

その場は笑いになったらしいが、しばらくして女の子は号泣。僕はグロッキーになって家に運ばれたのだとか。

後日謝りに謝ってその子には許しを得ることが出来た。何だったら今でも仲良くする大学時代の数少ない友人だ。僕は今後もその子の人生が楽しくなるように力添えをしていく。酒のこととはいえ、それが僕なりの償いだ。

とまぁ、そんなことがあったので、理性を無くした僕はなかなかに恐ろしい。そんな自分の一面は生涯見せる必要がないので、お酒で酔えなくていい。酔うほどまで飲まなくていい。

なんだっけ。

そうだ、これは銭湯記だ、そうだった。

まとまりがなくなってしまったが、銭湯はこうやって昔のことを思い出させてくれたりもする。

心に余裕ができて、自分を見つめ直すことができる。

そういう空白は、現代人に足りてないんじゃないか。

どげんかせんといかん。

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